街の中心にあるひときわ大きいデパートには、
いつもみんなが集まってきます。
そっとのぞいてみると、今日もたくさんのひとが
ショッピングを楽しんでいるようです…
「君には、華やかなローズの香りが合うと思うよ」
ラブラドールのお兄さんリアムが、
ピンク色の香水びんを手に取ると、
シュッとふきかけてくれました。
「すてきな香り！」
しろウサギのお姉さんルビーは、
目を閉じてうっとり。

一方2階の紳士服売り場からは、
にぎやかな会話が聞こえてきました。
「やっぱりこのコートが似合うよ、
着てみてごらん」
「いや、袖がある上着だとマストを
上りづらいし…」
「大丈夫！これで船に乗るわけじゃないんだから」
ダルメシアンのお兄さんジョンにすすめられて、
しぶしぶコートに腕を通した
ハスキーのお兄さんブルース。
鏡に映った姿を見て、まんざらでもなさそうです。

フレグランスショップから
ジュエリーコーナーにやってきたルビー。
ショーケースに並ぶ中から、ひときわ鮮やかに
輝く赤い宝石の耳飾りに目を奪われました。
「とてもいいと思う」
急に声をかけられて、
おどろいて振り向いたルビー。
「ブルース！びっくりした！」
「きれいな赤だね。海に映った
夕焼けの色に似ている」
「海に映った、夕焼け……」
ルビーは、もう一度耳飾りを見つめました。

ショッピングの後は、カフェでそっと一休み。
カフェオレを楽しむルビーの耳には、
さっきの耳飾りがきらりと光っています。
「ああ、やっぱり似合うね」
「あら！あなたもとっても似合っているわ！」
やってきたブルースは、さっきジョンに勧められた
コートを羽織っています。
「袖のある上着は、船ではあまり着ないんだけど…」
「いいじゃない！今日みたいなショッピングにはぴったりよ！」
ルビーの一言に、ブルースは思わず照れ笑い。
「さあ、あなたも一緒にコーヒーをいかが？」
「ありがとう！」
街のデパートには、いつ訪れても、
心がうきたつようなすてきな時間が流れているのです。